‥★★★61 請求書は宝の山〜山を切り開く
■成果とともに請求書の中身も確認する
会社の経済組織は、社長がすべての支出を算段しているわけではなく、業務を行う社員が20人いれば、20人それぞれに支出が存在し、20人分のムダが潜在します。
社長が使った接待交際費であれば、その使い道を把握していますから、効果の有無は自ら確認できます。しかし、社員ひとり一人となると、どうでしょう。
取引先はさまざまで、社員のアプローチも個々に異なります。
社員Aは接待交際費2万円を使い、2万円の商品を1台売った。
社員Bは接待交際費2万円を使い、2万円の商品を5台売った。
社員Cは接待交際費2万円を使い、2万円の商品を10台売った。
請求書の額面は同じでも、その成果は異なります。社員Aは問題外であり、Bが接待交際費の5倍、Cは10倍も売上を上げています。
請求書とその支出から導き出される結果が、成果をあげているか否かを求めるためには、すべての事柄について、事実関係を把握して、検証しなければなりません。
請求書を見れば、Cはキーマンをおさえるために接待したのか、10社に手土産をもっていったのかが明らかになります。
■事実関係がわかるのは、社長だけ
コストダウンの要は、社長が請求書に対して、目を光らせていること。経費を使った成果が出ていない場合はもちろんのこと、問題がない場合でも、最初に請求書を見て考えるのは、第60回で述べたように、いつ、誰が、どこで、何を、どうしたという5W。
次に「本当にこの支出はいるのか、いらないのか」ということ。3番目に比較検討をしながら、突き詰めていきます。
●例:接待交際費
その店でよかったのか⇔もっと安い店ではダメだったのか
時期は問題なかったのか⇔1カ月後にして、忘年会と兼ねられなかったのか
営業マンが3人で接待⇔2人ではダメだったのか
取引先3名を接待⇔部長1名だけではダメだったのか
お料理のコースとして良いか⇔もっと安いコースではダメだったのか
飲食店で接待する必要があるのか⇔花やモノではダメだったのか
これらのことを、接待交際費だけではなく、福利厚生費、旅費交通費などすべての請求書について、ひとつ1つ行っていきます。仕入については、他の業者に頼めないのか、頼めるのか。頼める業者は何社あるか、料金はどうか、などがカギとなります。
これらは、とても細かな作業の積み重ねであり、相応の時間を要することでしょう。面倒だ、大変だと、請求書の検証をなおざりにして、目に見える経費だけを削減しても、効果はあがりません。社員ひとり一人の支出に潜むムダを発見しなければ、コストダウンにはならないのです。
また、「うちは、部長がきちんと決裁しているから、大丈夫」と安心してはいませんか。たしかに、部長に支出を決裁する機能を持たせることは、業務をスムーズにし、便利です。
しかし、それは「予算内であれば、部長が判断してもかまいませんよ」という権限にすぎませんから、成果の検証とは別問題です。つまり、部長決裁とは予算をオーバーしなければ、成果の良し悪しにかかわらず、支払いを承認することが可能なのです。
会社の利益を考え、事実関係をすべて理解し、正当に判断できる人。請求書を通して、きちんと最適化されたお金が払われているかをチェックできる人。ムダを突き詰め、宝の山を切り開ける人。この条件がすべて当てはまるのは、中小企業であれば社長です。大企業であれば経理・財務部の役割になります。
|