‥★★★62 請求書は宝の山〜予算の砦
■役所も会社も予算体質
「予算を使い切る」と聞けば、年度末の道路工事を思い出す方も多いのではないでしょうか。予算のムダづかいの代表として挙げられるお役所ですが、予算で動いているのは、お役所も会社も同じです。
そして、お役所仕事に怒る納税者も、ひとたび、会社へ出勤すれば、「予算内の接待だから問題なし!」となります。予算を使い切ることは、会社も同じ。それが人の行動です。
たとえば、接待交際費の予算が年間100万円。営業部長は、予期せぬ出費もあるかもしれないと、チマチマ使い続け、3月決算を前に30万円も残った場合、「ラッキー、今年は豪華な慰労会をやるぞ」と使い尽くしても、問題はありません。予算内でクリアです。
一方、会社にとって、有益な予算の管理とは、30万円があまったら、あまったと申告する。部内の士気を高めるために、慰労会を行う必要があったとしても、費用を10万円に抑え、20万円は会社へ返上することです。
本来、予算というのは、単なる上限枠であって、目一杯使ってもよいお金ではありません。本来であれば、支出は少なくて、売上が上がるのがいいわけです。
しかし、予算が前例主義、前年度ベースで設定されることから、来期の予算確保の名目で、使い切ることが当たり前となり、結果、予算内なら、おとがめなしの砦へとなっています。
オーバーした予算はチェックをするが、クリアした予算は目の前をスルー。外から見ると立派な砦も、中に入れば、飲めや歌え、ムダの温床と化しているかもしれません。
■社長は常在戦場
社長にとっても予算は、会社を赤字から防ぐ砦であり、砦が守られたことに安堵し、予算を守る社員にも、信頼をおいているでしょう。しかし、本質的に、社長の考える最適化されたお金の使い方と、社員が使うお金の使い方は異なるということを肝に銘じておかなければいけません。
社長も社員もお金があまれば、うれしい。社長は30万円の経費削減ができて、黒字で喜ぶのに対し、社員は30万円の慰労会で喜ぶ。このように、社長と社員の行動は、相反するものです。このため、社長は「この売上であれば、30万円はあまるだろう」というチェックを必ずしなくてはいけません。
もちろん、緊縮財政を敷いて無理矢理、30万円をあまらせるのでも、−30万円予算を組むのでもありません。業務がスムーズに運び、成果を維持できる環境から、予算内のムダをピックアップするのです。
成果の上がらない銀座のクラブでの接待……接待費:10万円
↓<取引先の部長は巨人ファン>
東京ドームの巨人戦に招待……………………指定席S:5,900円
このように接待方法を変更することで、取引先の部長を営業担当2名が接待しても、経費は17,700円。82,300円のコストダウンになりますし、「息子さんとご一緒に」などとペアチケットを贈れば、8回招待ができます。
接待交際費のみならず、すべての請求書から支出を見極め、削減すべき予算なのか、活用すべき予算なのかを検証する。予算の中のムダを確認し、経費削減すべき余地を見つけることで、何をどのようにコストダウンすべきか。その方法が導き出されます。
社長は常在戦場。請求書を武器に予算の砦へ自ら踏み込み、ムダを制御していかなければなりません。
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