‥★★★59 しがらみの威力を発揮する「共存共栄」
■いい商品を優先的に手に入れるしがらみ
ビジネス・パートナーに代表される良いしがらみには、「良い商品を安く仕入れられる」という大きなメリットがあります。
いまの時代、仕入れ値はいくらでも安くなりますし、ただ安い商品なら、どこからでも購入することができます。しかし、いい商品を手に入れたいと考えた時、ものをいうのがしがらみです。
たとえば、寿司ネタ。回転寿司屋のネタなら、インターネットで検索し、一番卸値の安い業務用食材店から簡単に仕入れることができます。しかし、最高級の大間産のマグロを仕入れたいとなったら、しがらみが重要になってきます。
築地の鮮魚問屋を足を棒にして歩き回っても、100万円の束を積んでも、返ってくる言葉は、
「うちは、銀座の久兵衛さんに卸すことになってんでね」
「大間産が入ったら、まず一番に、吉兆さんに連絡することになっているんですよ」
と、しがらみの壁が出現します。
ダメモトで、近所の魚屋にたずねたら、「何とかしましょう、いつもご贔屓いただいてますから」と、魚屋のネットワークという、しがらみを駆使して、手に入れてくれる場合もあります。
優先的にいい商品を手に入れる環境は、しがらみなくして成立しません。必ず、ビジネス・パートナー、お得意様、良きお友だちが最優先になります。客として、寿司屋を訪れた場合だって、そうでしょう。
お得意様には店の奥から何やら取り出して、こそこそ。「同じ物を」と注文しても「仕入れが少ないもので、あいすみません」とあっさり断られてしまいます。
■持ちつ持たれつの共存関係
会社やお店にお客様がつくのではありません。いい商品にお客様がつくのです。常にいい商品を仕入れることが、集客、売上のカギとなります。いい商品を仕入れるためには、しがらみの共犯関係が必要です。
鮮魚問屋は、老舗の一流店にいいネタを優先的に卸すことによって、御用達。老舗ののれん力を手に入れることができます。「あの老舗が仕入れている店」だからと、品質が保証され、ここで仕入れることが寿司屋のステイタスにまでなります。
寿司屋は、鮮魚問屋にのれんを貸すことによって、いいネタが優先的に、安定的に確保され、「あそこの寿司は間違いない」と千客万来。老舗ののれんは受け継がれていきます。
老舗寿司屋も鮮魚問屋ものれんを使って、集客をあげ、利益を上げます。このようなしがらみの相互作用によって、ブランドが生まれ、利益の源泉が湧き出します。もちろん、のれんを借りているからといって、密室になる必要はありません。
プロのせめぎ合い。正当な商品評価に対する値段交渉は、存在します。しかし、「恩恵をこうむっている分、1円で卸せ」と、のれん代を要求したなら、たちまち、共犯関係は崩れ、いいネタは入ってこなくなります。
利害関係の一致、持ちつ持たれつの共存関係こそが、しがらみの威力を発揮する最高の組み合わせ、ビジネス・パートナーです。ともに成長していくしがらみこそが、最良のしがらみ、利益の源泉です。
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