‥★★★56 お金が入る構造が会社と家庭とは、まったく異なる
■取引量の圧倒的な違い
家庭の収支といえば、家賃に水道光熱費、食費、教育費、保険、医療費、ローン、おこづかいなど。しかし、会社における収支の数は半端ではありません。家庭の取引量と会社の取引量では圧倒的に差があります。桁違いです。
賃貸料や水道光熱費、人件費はもちろんのこと、接待交際費、交通費など。雇用保険、労災保険、健康保険、厚生年金、法人税など、それぞれに手続きがあり、コストが発生します。会社の基本は、仕入と売上。売掛金、買掛金を管理しなければいけません。
日々、領収書や請求書はたまっていきます。会社の売上が大きくなればなるほど、仕入や経費に大きな金が出るようになります。
しかし、家庭では入ってくるお金は一定。節約がいつも頭にある主婦感覚の妻が経理をしている会社では、それが実感できず、「なぜ、もっと安く済ませられないの?」と考えてしまうのです。
将来の利益を見越したうえでの接待交際費など、主婦感覚では、とうてい理解できないことがたくさんあります。
会社の構造は、「健康のため禁煙。よって、パパのおこづかい削減」=黒字というような単純明快なものではありません。無駄な経費と有益な経費が入り組み、短期的な利益と長期的な利益が錯綜しています。
削減すべき経費か、利益を生む経費か。そのひとつ1つをディテールに分析し、見極める必要が会社にはあります。会社とはお金を使って、稼ぐ構造です。給料定額制の家庭を手本にし、支出をしぶり続けたら、儲けは先細りです。
■やり玉にあがる経費
経費削減のやり玉に上がるのが、目に見えない利益、長期的に及ぼす利益です。ホームページで顧客獲得を目論んでも、すぐには売上にはつながりません。メールマガジンを発行し、自社ブランドを高める布石をうっても、なかなか会社の価値は上がりません。
まったく売上がないにもかかわらず、メルマガの原稿執筆やホームページの更新に費やす時間。レンタルサーバー代など。家庭の理論を用いると、遊んでいるようにしか見えません。短期的な利益にとらわれた経営者も同様、目先の出費にがんじがらめになってしまいます。
たとえば、青色LED。開発には膨大な時間と経費がかかり、会社と研究者の対立も表面化しました。開発期間中の利益は0円です。しかし、開発に成功し、市場に出たとたん、開発費をはるかにしのぐ利益が生み出され、会社は未来永劫、青色LEDで稼ぎ続けることになります。
人は、目に見えないものに対する投資を「賭け」と認識します。開発も「社運を左右する賭け」とよく称されます。開発費は正当性を持ちますが、メルマガの発行などの会社のブランドづくり、接待交際費となると、お父さんの競馬のごとく、やり玉に上がります。なぜでしょう。
実績やデータによる裏づけがないこと。それによる分析が難しいこと。これらがやり玉の要因でしょうか。しかし、会社はこの分析力をつけてこそ、会社です。ビジネスに勝つための力です。未来予測のない会社は儲かりません。
「何でも削れ、削れるものはとことん削れ!」の家庭の理論ではなく、10年後に稼ぐ経費か、10年たっても目が出ない経費か。いかに効率良くお金を使って、いかに高いパフォーマンスを出すか。会社における経費削減は、その組み合わせを考えることに尽きるのです。
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