‥★★★55 経費は節約ではなく、削減する
■社員の行動は、すべて人件費
次の行動のうち、経費削減になっているものはどれでしょう。(2)(3)は給料20万円(分給31.25円)の社員が行ったと計算します。
(1)昼休みにはデスクのライトを消す
(2)取引先へは電車に乗らず、1駅分歩く
(3)バイク便を廃止して、社員が届ける
(4)トイレのペーパータオルを廃止する
(5)役員会議を2時間から1時間に短縮する
(1)は社員の心がけひとつで、経費削減です。
(2)は電車賃130円を削減するために、10分かけて歩けば最低でも分給31.25円×10分=312.5円。人件費の浪費による経費損失です。
(3)は往復1時間かけて届けたとすると、31.25円×60分=1,875円。「都内6区、一律800円」という安いバイク便を使った場合と比べて1,075円の人件費浪費による経費損失。しかし、時給750円のパートを使用すれば50円の経費削減。ただし、当日届けるのではなく、もっと前に手配すれば宅配便や郵便で済みます。
(4)は経費削減です。しかし、ペーパータオルの代わりに、大量のトイレットペーパーが消費されたという例もあるので、「環境に配慮して、廃止」などと格好をつけないようにしましょう。経費削減の意識を社員に植え付けてこそ、実現される経費削減です。
(5)は最大の経費削減になります。64万円の役員が5人で2時間会議をすると、100円×5人×120分=60,000円。1時間で済ませれば、半分の3万円の節約になります。
会社の場合は、すべての行動に人件費がかかります。給料20万円の新入社員でも、トイレ94円、珈琲で息抜き156円、ゴミ分別313円、朝礼469円、会議1,875円。
給料
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20万円
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30万円
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50万円
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60万円
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70万円
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100万円
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トイレ 3分 |
94円
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141円
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234円
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281円
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328円
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469円
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珈琲 5分 |
156円
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234円
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391円
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469円
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547円
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781円
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ゴミ 10分 |
313円
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469円
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781円
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938円
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1,094円
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1,563円
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朝礼 15分 |
469円
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703円
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1,172円
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1,406円
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1,641円
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2,344円
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会議 1時間 |
1,875円
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2,813円
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4,688円
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5,625円
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6,563円
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9,375円
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※小数点以下、四捨五入
■社員をムダに動かすな
新入社員が、ゴミの分別をするだけで313円。時給750円のパートの25分間分に相当します。パートの分給は12.5円ですから、パートに1日10分間、ゴミ分別を担当させると、125円。1日あたり188円のコストダウンになります。1日188円→1週間950円→1カ月3,760円→1年間45,120円の経費削減です。
45,120円は新入社員3日分の給料に相当します。つまりは、ゴミ分別という利益に関係しない作業から解放することで、年間3日間も余分に、働かせることが可能になるのです。いくら新入社員とはいえ、3日間もあれば45,120円以上の貢献はできるはず。
給料100万円の重鎮にいたっては珈琲を飲んで、パート1時間分。会議1時間当たりの人件費は、新入社員5時間分、パート12.5時間分。しかも、会議は1人ではできませんから、さらに数人の人件費が必要になるわけです。
社員が動くことによって消費される分給と、その行動によって得られる利益。経費削減とは、人件費よりも、削減または利益が大きい場合を指します。何でもかんでも、「節約!節約!!」と家庭の法則で、社員を動かせば、人件費が消費され、会社の利益は失われていきます。
会社では、何でもかんでも分給!分給!! 分給換算です。
◆「行動によって得られる利益」−「社員が1分ごとに消費する人件費」
この計算が経費削減の基本です。徹底的に計算して、経費削減を見つめ直してみましょう。
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