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★★★49 価格競争の激しい自動車業界に見る原価管理

鉄のコストダウンができた理由

 自動車業界は、世界レベルでコスト競争になっています。単純に考えると、使う鉄を少なくすれば、コストダウンになることが誰でもわかるはずです。自動車鋼板という特殊な鉄が使われていますが、たとえばボンネットの厚さを0.01ミリ削っただけでも、1モデル当たりの生産台数は年間25万台ですから、大きなコストダウンになります。

 何ミリ削るかというのは、自動車メーカーが考えることです。鉄鋼メーカーでも、薄板生産を行うコイルセンターと呼ばれる会社でも、ないのです。

 昔の車は絶対につぶれないようにつくっていたから、全体的に鉄の量が多いのに対し、いまの車は事故時につぶれます。つぶれる仕様で作っているから、柔らかく薄い。その分、コストダウンになり、全体的に華奢なつくりになっています。

 正面衝突事故が起こったときに、つぶれることにより、その分の衝撃を緩和して、人に与える衝撃を少なくする構造の「クラッシャブルボディ」になっています。

 そして衝撃を感知すると、エアバッグが作動し、乗員の顔や胸がハンドルやダッシュボードに衝突するのを防ぐ役割をしています。要するにコストダウンと安全性が一体となっているわけです。

 余談になりますが、メルセデスベンツがクラッシャブルボディ構造を開発、現在では、世界のほとんどの自動車に採用されています。自動車メーカーの鉄のコストダウンが進んだ結果として、世界中の鉄鋼メーカーの再編が進んだといえます。

小さくても、すべてのものに対し原価管理を行う

 自動車は鉄だけではなく、アルミ、プラスック、ガラス、革など多くの素材を使っていますし、ヘッドライトの電球をひとつとっても、明るさ、消費電力などで、価格は異なります。エアコン、CDプレーヤーなど、あらゆるものすべてが原価に影響します。

 価格競争が激しい自動車業界では、自動車メーカーが徹底的に原価管理をしています。デザインを決め、試作車をつくり、量産に入る前に部品メーカーなどに見積もりをとり、「ここをこう削ったらいくら」などと議論して決めます。

 リードタイムを短くするため、新車開発から購買部や部品メーカーがかかわることもあるようです。売価を決めるのは発売の直前。他社の動向や利益率、販売戦略などが考慮され、売価が決定します。





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