‥★★★25 アウトソーシング例、DMの封入作業を見てみる
■社内コストや利益との対比
法令と通達のCD-ROM「TAX
Navigator」は、半年ごとにバージョンアップしています。その際、DMを7万通発送しています。もちろん、DMの封入作業などは専門業者へアウトソーシングをしています。
アウトソーシングするかどうかの判断基準は、第一にコストです。この際のコストとは低価格な業者を探すということではなく、社内作業にかかる費用との対比です。
業者料金が10万円、従業員10人を1日その作業に当てれば、DMの発送を完了できるとします。ここで、従業員を使用すると判断した経営者は、経営者として失格というしかありません。目に見える金額しか勘定していないからです。
そもそも従業員の1日当たりの給与は、1人当たり1万円では済みません。給与を労働日数で割れば、すぐわかることです。さらに、賞与や社会保険料の支払もあることも考慮して判断しなければなりません。
さらに従業員は、封入作業のために特化して採用したわけではなく、大半が事務職です。専門業者に比べて、そのコスト効率の差は、火を見るより明らかであり、一般的に、その差は5倍以上になります。従業員にやらせることにより、「貧乏暇なし」会社に陥ります。封入会社ではない普通の会社が、どんなに一生懸命やっても成り立たないのは、自明の理です。
「TAX
Navigator」のDMを発送した際、宛名のタックシールは従業員にプリントアウトさせます。もちろん、データを渡し、タックシールの印刷も任せることもできましたが、それをすると印刷代が上乗せされ、高くつく。このプリントアウトには半日かかりますが、業者に任せるよりも、安上がりです。全部任せてしまったら、赤字になりがちです。このように、アウトソーシングを利用する際には、常に人件費とその利益とバランスがとれる組み合わせを考えながら進めないと、コストダウンにはならないのです。
第二の判断基準は、イレギュラーな作業に伴う不安定感を回避できること。7万通ものDMを社内で対応しようとすれば、どれほどの人数と日数が必要なのか予想することもできません。予想できなければ、予定することも不可能です。その状態で見切り発車して、はたして間に合うのでしょうか。DMはタイミングを逸してしまうと、効果は薄れてしまい、骨折り損のくたびれ儲け。経営者の能力が問われる事態になります。そこで、確実に結果の見込める専門業者へアウトソーシングする。これも利益との対比による判断です。
■アウトソーシングとバイトの違い
市役所の税務課でアルバイトをしていた女性から、こんな話を聞いたことがあります。バイト業務に封筒の封をするという作業があった。単に封をするといっても、市内の全世帯に宛てたものだから、その量は半端ではありません。作業は、封筒の糊付けをする機械を使用しても、3日はかかったといいます。
そして、その機械を購入するまでは、手作業で一枚一枚糊付けをしていたというから、驚くほかはありません。人件費という名の税金を浪費した郵便物です。シール印刷はがきへの変更し、印刷業者へアウトソーシングすればよさそうなものですが、まだまだ、個人情報を丸ごと外に出すことに抵抗感じる市民も多いらしいのです。
数カ月後、彼女がハローワークへ出かけると、市役所の別の部署のバイト求人が張り出されていました。勤務地が役所のその部署なのに、求人主は市役所ではなく、株式会社○×。アウトソーシング会社でした。アウトソーシングするか、バイトを雇うかは、情報管理の点から線引きできます。情報管理をする事情のない業務に関しては、アウトソーシング化のメリットが大きいといえます。
バイトを雇うと、作業を一から教え、監督する従業員が必要になるというデメリットも生じます。DM発送を例にすると、「この順番にチラシを重ね、一部ずつ折ると手間がかかるから、5部くらいまとめて折ってやるんだよ」という具合に。しかし、アウトソーシングなら、中身のサンプルを示し、「この状態に仕上げなければ、お金を払わない」といっておくだけで済みます。
バイトもアウトソーシング業者も能力はさまざまです。バイトの能力は自社で解決しなければなりません。指示し、注意し、疎ましがられ、それでも納期に間に合わなければ残業代を支払わなければいけません。しかし、業者ならば担当社に一言注意をするだけで、業者社内で調整します。ストレス無用です。納期厳守が信頼の証。どんなに残業が続こうとも、契約時の金額が変わることはありません。すべては成果ベースで進めることができます。
加えて、業者は企業間の取引ですから、支払いも翌々月締めの翌月払いと、支払い期間に猶予があります。バイトなら日払いも当り前。企業対企業のビジネスの利点を利用することで、さまざまなリスクから回避されます。
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