‥★★★23 組織再生の人事の根本理論2
■プロが職務分析をして、人材を見極める
赤字の会社の大半がやっているのは、仕事量よりも多い人材を配置していることです。多くの企業は、仕事量から配置する人の数を考える「演繹法」ではなく、人が必要だから配置するという「帰納法」で判断しています。
社長は「総務が3人だから、経理も3人にしたほうがいいだろう」というように判断しているのです。だから、赤字になってしまう。あるべき理論で、あるべき形を示す「演繹法」で従業員を配置すれば、ムダな人件費は発生しないことになります。
たとえば経理部に3人の人がいたとします。経理はプロである公認会計士や税理士が職務分析すれば、何人必要かがわかります。仮に2人でできるとすれば、1人は必要でないことがわかるわけです。そもそも2人でできることを、3人でやっていること、1,500万しか稼いでない会社が、原価2,000万円かけること自体が社長の判断ミスです。
【経理が3人のとき】 【経理を2人にすれば】
売上 1,500万円 売上 1,500万円
原価 2,000万円 原価 1,500万円
―――――――― ――――――――
−500万円 0
赤字 赤字からの脱却
赤字会社であれば、すべての部署で公認会計士・税理士、社会保険労務士、人事コンサルタントなどプロが職務分析をして、いまの人材を見極めます。
営業や製造は見なくても判断できます。たとえば営業の場合、月商1億円ならば、大体30人ぐらいの人がいれば十分なので、仮に50人いたら、20人が不要になります。成績により、残す人を決めればいいわけです。
製造では、機械に頼る部分が大きいので、あまり能力差は出ません。それよりも賃金体系が年功序列になっていれば、高齢者が多ければ人件費が大きくなりますから、成果主義に変える。あるいは、正社員をパートタイマーに変えるだけでも、相当なコストダウンができます。その分、赤字が小さくなります。
古い体質の赤字会社の場合、社内の人間が気がつかないムダが多いので、合理的に組織構成を変えていけば、利益を出せる可能性が大きくあります。利益を出せる力を持っていながら、ムダが多いから、利益が食われて赤字になっているわけです。
そのため、組織を相対的に見て、必要な人間と必要でない人間を分けます。たとえば、経理部では必要な2人、1人は必要ではないと分け、その後、経理部は2人をやらせる。すべての部署で必要な人と不要な人をわけます。そして不要になった人は、リストラするわけでも、違う部署に送るわけでもありません。彼らをまとめて新会社をつくり、そこで営業をやらせます。
■全部署で必要な人と必要でない人を分ける
すべての部署が肥大化しているから、赤字会社になるのであり、すべてを縮小していけば、人は絶対にあまります。経理であまって、人事、総務、営業でもあまります。だから、新会社をつくるわけです。
この目的として、ひとつにはそれぞれの部署に残った人がどんどん仕事をやっていく体制づくりをする狙いがあります。最適なパフォーマンスが出るように仕組んでいきます。
会社に来て、午前中は新聞を読んいる部長がいたら、士気が落ちるのは当たり前です。新聞を読んでいても平気な部長を分けることにより、残った2人のやる気がアップしますから、利益体質の会社をつくれる。だから、必要な人と必要でない人を分ける必要があります。
残る人間は能力評価をして決めていますから、リストラとは根本的に異なります。極論をいえば、優秀な人には給料を上げて、もっと働いてもらう仕組みをつくることもできます。こうして会社として本来あるべき姿、理想の会社に組み立てていきます。
実際、能力がある20代がいても、能力のない課長の下では思うように仕事ができない。がんばっても評価されないということがあります。プロが見て、課長が必要ないと判断すれば、その能力ある20代を残して、彼らの働きやすい環境にすることができます。そうすれば、彼らは自由に働くことができますから、より力が発揮することができます。
2つ目は、不要な人はリストラ対象だという理論もありますが、会社として人員削減をできないのであれば、従業員は会社の資源だということを、本人も社長も理解しなければいけません。そのために彼らを分けて、それを生かす箱である新会社をつくる必要があります。いままでは埋没していた潜在的なパワーを新会社で発揮してもらうのです。
新会社に入れられた本人も、自分では薄々仕事ができないと気がついています。「これはムダな作業だ。合理化できるかな」と思いながらも、毎日現場で気がつかないふりをしながら、仕事をしている。ただ、誰も評価できないから、続けていないだけのことです。
■必要でない人をまとめて新会社を設立
新会社では本体と同じ仕事をするわけではなく、能力がわかりやすいように営業をします。有能な社長を置いて、厳しく管理し、その社長に旗を振らせます。だから変わる気がある人は変われるのです。
極端な話をすれば、彼らが1円でも売上が上がれば黒字になります。そのため社長は、
「辞めるのでもいいです。でも、残るのならば1円以上、売上を上げてください。それだけです。その分、給料は払います」
といって、本人にがんばってもらう。給料の計算も本体とは完全に分け、成果報酬にします。そうすると、会社の新たなパワーになります。退職する人が多ければ、ある意味リストラになるかもしれませんが、結果としては自己都合で辞めていくだけです。リストラとは基本的アプローチが違うから有能な人が残ります。本人のがんばり次第なのです。
「家族がいるから……、住宅ローンがあるから……」という人は、そこで歯を食いしばり、結果を出せば、生き残ることができます。新会社で売上を上げられれば、本体に残してもいいわけです。
こういう軍隊型の組織にすれば、3カ月ぐらいで優劣が明解になります。働いていない明らかになった人は、それまで年収1,000万円の人でも、成果報酬ですから、稼げなければ300〜400万円。それ以下の場合もあるでしょう。それが「納得できない」というなら、「辞めてください」というしかないのです。
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