‥★★★18 社長がラクをしようとする会社は赤字になる
■人員削減しないと売上拡大に目が向く
弱い社長は赤字が続いていても、「あなたがいると儲からなくなるから、辞めてください」とは、なかなかいいだすことができません。いえないから、おかしな行動をとることになります。
第10回で例にあげた月給20万円で電話番をしている女性も、かわいそうな立場になります。彼女自身はきちんと仕事をしていても、ほかの社員は賞与が出ていないから、「あの子を辞めさせればいいのに……」と思う。そうすると、冷たい態度になります。
挙げ句の果てには、みんなから「儲からないのは、お前のせいだ」といわれるかもしれません。儲からないのは彼女の採用を決めた人の責任であり、彼女を攻めるのは間違っています。採用した社長に文句がいえない代わりに、彼女が風当りを受けているのです。
不満を抱えている社員にとっては、彼女の存在自体がお荷物であり、「彼女さえ、いなければ」という気持ちが大きくなっていきます。お門違いということすら、わからなくなり、彼女に文句をいいはじめるのも、不思議なことではありません。
■社長だけではなく、従業員もラクをしたい
人を切れない社長がどのようなことをするかというと、売上を伸ばして利益を出そうとします。売り上げを伸ばすことによって、彼女の人件費、要するにコストを吸収しようという方向に誰もがいきます。結果が出ないと、ますます赤字が膨らんでいきます。
人間は常にラクをしたいという習性を持っているので、社長はお金で解決できると考えると、ラクができる方向でお金を使います。人を切るのは面倒くさいから、できないのに売上を目指そうとするのです。
従業員も常にラクをしたい。だから、「忙しいから、人を入れてください」と、ちょっとでも忙しくなると、常に人手が足りないといってきます。退職者がいたときに、「私が彼が辞めた分まで働きますから、給料上げてください」ということは、ほとんどありません。
人間は2つのタイプに分類できます。まずは頭を使って稼ぎ、実績を上げたいと考える人。「絶対成功したい」と思うタイプです。もうひとつは、頭を使わないで、いわれたとおりに、ただやっていたい人。「そこそこでいい」と思っているタイプです。大半の人が、後者です。
だからこそ、基本的に従業員のいうことを聞いていると、経営がうまくいかなくなります。
■社長はどんな仕事でもわからないと赤字になる
社長がラクしようとして、よくありがちなのは社長ができない、あるいは苦手な仕事を従業員にやらせることです。社長が書籍を読んだり、セミナーを受けたりして身につければいいことなのに、それ専門の従業員を雇い、お金で解決しようとします。
経理ができない社長と経理担当者。パソコンがわからない社長とIT担当者。営業が苦手な社長と営業担当者。社長が仕事をわからないから、従業員がいうままになりやすいのです。
こうした担当者から、「○×が必要なので、購入してください」といわれると、社長が必要か必要ではないかの判断ができません。本当は必要ではないのに、購入することになります。つまりは余分な経費がかかるわけです。
さらに、イニシアチブを従業員に握られ、社長は強いことがいえなくなります。その担当者がしっかり仕事をしているかも社長は見ることができませんから、適性な給料を払えません。結果的に人件費もよけいにかかり、赤字になります。
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