‥★★★16 赤字は悪、黒字は正義
■赤字とは借金が膨らむこと
赤字が続くと、どうなるのでしょうか? 赤字とは、支出が収入を上回っている状態のことをいいます。税引き後利益がマイナスになっていることです。
個人の話でいえば、給料だけでは生活できないのが赤字です。給料が下がったら、ムダを切り詰めて節約、生活を改めて給料だけで暮らせるようにすればいいのに、どんどん使っていれば赤字になります。
そうなると、預貯金を崩します。それが底をつけば、手軽にお金を借りられるクレジットカードで、キャッシングをする。キャッシングを続けていると、借金人生に突入します。返済するために、ほかのカードでキャッシングをするようになると、雪だるま式に借金が増え、消費者金融に手を出し、挙げ句の果てには闇金融に頼る。最終的には自己破産をすることになります。
企業で赤字が続くと、これまでは金融機関からの借入金などで穴埋めしてきました。累積赤字が大きく膨らむと、債務超過に陥ります。いまの時代、金融機関からの借入は難しいため、赤字になれば、社長の個人的な資財を投入することになります。赤字が続き、その限界がくれば倒産。社長も自己破産に追い込まれます。企業もムダな経費を削って、利益が出せるようにすればいいのに、それができないため、赤字が膨らんでいくのです。
■従業員皆が考える風土をつくらないと赤字に
会社が潰れれば、社員だけではなく、その家族も路頭に迷い、どんどん悲惨な状況になります。だからこそ、黒字にする必要があるわけです。そして、従業員みんなが「黒字は良くて、赤字はダメ」と、考えるようにならなければ儲けるようにはなりません。
なぜでしょうか? これをわかっていないと、従業員が時間を切り売りしている感覚になり、ダラダラ働くからです。どんな仕事でも同じです。人間は、忙しく動こうと思えば、いくらでも忙しく動くことができます。たとえば店舗で、お客さんがいなければ、掃除をする。棚の整理やディスプレイを工夫することなど、たくさんやることはあります。結局、従業員のヤル気と効率の問題が意識されていないのです。
「働くこと=時間の切り売り」だと考えると、いわれたことしかやりません。また、何か問題や変化があっても、気がつきません。棚の商品が倒れていたり、ホコリがかぶっていたりしても、そのままにしてしまうから、売上がどんど落ちていく。人間は何も考えないと、ラクな道を選びがちですが、それでは仕事がおもしろくなく、職場の士気も低くなります。
仕事がおもしろいと感じられるのは、自分で考えて、行動を起こすこと。先の例でいえば、ひとりのヤル気がある従業員がデイスプレイを直したら、お客さんに「この商品が欲しいわ」といわれれば、大きな喜びになります。これを組織としてやるためには、従業員の意識改革をする必要があります。刺激とチャンスを与えて、新しいことをどんどんやらせるような地盤をつくっていかなければ、仕事をガンガンやるようにならないわけです。
■開発投資ができなければ先細り
赤字になると、開発投資ができなくなるのも大きい問題です。従業員に新しいことをさせようとしても、それができません。黒字であれば、その分を開発投資に回せるため、新規事業のリサーチをしたり、研究開発をしたり、従業員や外注スタッフを集めて動かすこともできます。
黒字の会社は、顧客の意見をヒントにして新規事業を行っています。時間の流れが早い現在、2年前と同じことをやっていたら、成長できません。また、本業重視の時代ですから、まったく違うジャンルを手がけるのではなく、本業から派生したビジネスで新しい柱を打ち出していくのが正しい開発投資といえます。そうすれば他社との差別化が出て、オンリーワンとしての企業の強さがどんどん出ます。
新規事業のためには、お金がいります。黒字化されないと、お金はつくれませんから、赤字の会社は設備投資もできなくなります。古いパソコンやコピー機を壊れるまで使い続け、工夫することもなく、ひたすら同じ仕事をするという単調な毎日になります。
さらに赤字の会社は交際費が使えなくなります。社長が昼、夜出かけることなく、会社でカップラーメンをすすっている。営業部長も、毎日会社にいる。こうなると取引先との関係を強化できないばかりか、新規取引先も広がりません。ただでさえ赤字なのに、復活の可能性がゼロに近くなって、八方ふさがりの状態となります。
|