‥★★★3 不明確な意思決定に不効率が生じる
■不効率を測る物差しを明確にする
綿密な計画や検討のないまま投資の意思決定を行い、不効率なコストを発生させているケースを見かけます。
簡単な例で説明してみましょう。
どの会社でも共通して発生するコストとしてオフィス家賃があります。創業当初、社長を含めて5人で起業し、10坪(15万円/月)のオフィスを借りたとします。什器の設置スペースを考えるとこの面積でほぼ限界のスペースです。
創業から1年、事業が順調に立ち上がり従業員のマンパワーも限界が寸前に迫ってきます。3ヶ月後には、新人の採用をしなければ、折角の顧客からの紹介も断らなければなりません。ここで考えなければいけないのが、増床もしくは引越です。増床する余裕がその建物になければ、引越以外に選択肢はありません。
現状のオフィスを退去するにしても6ヶ月前予告が義務づけられているし、現状復旧費用も負担しなければなりません。より広いところに移転するわけですから家賃も高くなる可能性が高くなります。加えて人件費も増えてしまいます。
こんなことであれば、最初から15坪(20万円/月)のオフィスを借りておけばよかった・・・。
このケースの場合、15坪オフィスの方が2年間で、205万円の資金負担を軽減させられた可能性があります。
10坪 15坪 差引
1年目家賃 180万円 240万円 60万円
2年目家賃 240万円 240万円 0万円
予告違反家賃 90万円 0万円 △90万円
1年目保証金 90万円 120万円 30万円
2年目保証金 120万円 0万円 △120万円
現状復旧費 45万円 0万円 △45万円
引越費用 20万円 0万円 △20万円
不動産仲介料 20万円 0万円 △20万円
合計 805万円 600万円 △205万円
実際には、この他に住所変更に伴うもろもろの費用がかかってしまいます。このように単純な損得勘定ができるわけではありませんが、ここでのポイントは、創業時にどこまで綿密にシミュレーションしていたかということです。
綿密な計画の元に15坪オフィスを借りて、その通りの結果を得られたのであれば、205万円の無駄金を使わずにすんだということになります。これに対し、たまたまこうなったというのでは、コストダウンに成功したとは必ずしもいえません。
大切なのは経営者のイメージする計画をより綿密にシミュレーションして、投資範囲を明確にした上で余分なコストや資金の流出を防ぐことであり、コストの適正水準は経営者自らの意思によって変わってくるものなのです。
経営者のイメージする計画について、最適なコストの適正水準をあらかじめ見込んだシミュレーションができれば、このような水漏れのようなコストの発生を最初から防ぐことができるのです。
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