‥‥★★22 組織再生の人事の根本理論1
■早期希望退職を募ると、優秀な人材が流出する
これまで銀行などでは、何か問題を起こした人を辞めさせるのに、机と電話だけの部屋に入れて、何の仕事も与えない。なかなか辞めなければ、役職と給料を下げて、子会社に送り込むといったことをしてきました。しかし、これをすると本人が惨めになります。
惨めにさせるのは人間としてのプライドを落としますから、絶対にしてはいけないことです。組織としては、新会社をつくって余剰人員を吸収して、本人が自立できるかどうかを、正々堂々と黙って見ていればいいのです。
赤字会社は、たいてい人材をいっぱい抱えています。実際は6割くらいの人員で回るという状態を組織として正当だと認めてはいません。黒字会社は効率の良い人員で回しているから、利益が出せるのです。赤字会社ほど、「まだうちの会社は安泰だからいいよね」と危機感がありません。従業員同士で慰めあったり、傷をなめ合う緩い体制になっているのです。
赤字会社では、人員削減をしなければいけないのが明らかなのに、儲けられない人が保護されていること自体が問題です。4割の人が余剰になるわけですが、余剰人員をリストラできなければ、彼らが売上を上げる方向に持っていけばいい。こうしたことが、無視して考えられています。
早期希望退職は有能な順に辞めていきます。希望するのは、「退職しても、他の企業に転職できる」という自信のある人です。本来であれば、会社を支えなけばいけない優秀な人材が流出していきます。
■みんなで何かをするのは時代遅れ
従業員1,000人の赤字会社があるとします。そうすると、たいてい行うのが社内で委員会をつくること。たとえば「コスト削減委員会」のようなものをつくって、「みんなで経費削減しましょう」となります。日本企業は和気あいあいの組織ですから、みんなで何かをしようとします。しかし、自由競争時代に、みんなで経費削減しようとすると、赤字が増えるだけです。
電気代の節約をするだけでも、それを行う人件費がかります。こうしたムダな動きをすることが、すべてコストになることをわかっていない社長が、「経費節減だ」と訴え、実施する企業が多いのです。
経費の中でもっとも大きいのが人件費であり、それを削減しようとしても、その委員会に属している人たちは同じ会社の仲間。誰もがいい人、いい顔をしたがり、悪者になりたくありません。そういう人たちが、仲間の首を切ることができるでしょうか? 「働いてくれればいいんだから」と思って行動しますから、決して首は切れませんし、部署の移動もできません。
実行したとしても、必要最低限の人員削減が精一杯で、大胆な人員削減はできないのです。そうすると、早期退職希望者を募るしか方法はなくなります。それにリストラのきちっとした定義がないと、誰を辞めさせていいのか、人事の責任者に負担がかかります。頭を悩ませて、神経がピリビリして、だいたい病気になってしまいます。
■コストダウンにはレベルがあり、それは社長の考え次第
そもそもリストラ自体がナンセンスなんです。きちんと給料の3倍を稼げば、給料を払えばいいのです。それを自覚して、行動できるようにするためには、「あなたは余分な人間です。組織としては、いつでも切る体制に置きますよ」と、まず自覚させます。そのうえで、「働くんですか? 働かないんですか? 成果報酬分は払いますよ」といえば済むことです。
ぬるま湯に長い間浸かってきた人たちを戦力とするためには、軍隊のような厳しい組織に置かないと、変わることができません。自ら変わろうとすれば、戦力になるように洗練させることができます。
赤字企業は、ムダが多い。社長のコストダウンの考え方のレベルがありますから、2割でいい人もいますし、5割、8割をやりたい人もいます。ニーズに応じてやり方はあります。5割以上の削減をするのであれば、スーパーコストダウンの中核となる組織再生の人事面でのリストラの根本理論を応用して、実施していく必要があります。
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