‥‥★★13 間違った経費削減とは?
■人件費を減らす意味を考える
役員を送り込んでいる銀行管理下にある会社にある会社がよくやるのは、あらゆる経費、交際費などを削ることです。決算書を見て、人件費を減らさなければならないと判断したら、一律賃金カットします。
一律賃金カットすれば、利益は出やすくなるように見えますが、従業員の士気が落ちて、売上は下がります。そこで考えなければいけないのは、人件費が高いことが問題なのかということです。次の二人を考えてみましょう。
・年収1,000万円、キャリア10年、35歳、営業課長Aさん
・年収300万円、入社1年目、24歳、営業スタッフBさん
Bさんは年収300万円以上の成績は上げていないはずです。入社1年目では、Aさんが指導をして、その仕事をこなすのが精一杯でしょう。会社は賃金に加えて、保険料なども払っていますから、働きよりもかけている経費のほうが多くなっています。
その一方、Aさんは部下の指導もして、営業成績も上げているからこそ、課長になっているはずです。Aさんは会社がかけている経費の数倍稼いでいます。
希望退職は、人件費が高い年齢を対象にしますから、そのときにAさんが応募し、辞めてしまったら、どうなるでしょうか。代わりの営業課長を立てなければならなくなります。営業課長が決まるまで、その課はリーダーを失い、うまく回らなくなります。Bさんの代わりならば、たくさんいるはずです。Bさんが辞めても、その課は誰かか補うことで回っていきます。
給料が高くても、それ以上稼いでいる従業員は、会社の財産です。経費や交際費など、払っているお金の中で、本当にムダなのは、お金を使っても、利益をもたらさないものです。一円も戻らないものなのです。人件費が高いのが問題ではなく、稼いでいる人、稼いでいない人をしっかり見極める必要があるのです。
■なんでも安ければいいのか
次は、仕入での経費削減を考えてみましょう。よく聞くのが、請求書が届いてから、「もっと負けてくれ」と言われるということです。このような会社の社長は、かかる経費をできるだけ下げたいから、ともかく、お金を支払う行為に対して、一律叩きます。「払いたくない、負けろ、負けろ」となるわけです。「安くさせること=経費削減」と思い込んでいると、このようになります。
一律叩くと、どのようになるかを考えてみましょう。ある会社から2つの商品を仕入れているとします。
・Aは100円で仕入れて、200円で売っている商品
・Bは100円で仕入れて、110円で売っている商品
2つの商品は同じ100円の仕入値ですが、付加価値が違います。Aは200円で売れるわけですから、付加価値が高いわけです。そのときに、「一律安くしろ」というとどうなるでしょうか。
「Aはウチの看板商品ですから、安くすることはできません」
「それならば、Aを仕入れるのはやめにする」
「わかりました」
こうなると、その会社は100円の利益を出す商品がなくなります。Bは10円だけしか利益を生みませんから、たちまちこの会社は儲からなくなります。仕入はその商品を売るために行います。なんでも安ければ良いわけではありません。お金を使うのは、利益を稼ぎ出すために行います。
高く売れるのならば、高く仕入れるべきなのを、「一律に安くしろ」といったら、経営が傾きます。最適な組み合わせを考えて、いいのか、悪いのかを考えなければいけないのに、一律叩いたら、付加価値の高い商品であるAを仕入られなくなるのです。
かけたお金に対して、どれだけ利益が出ているかを相対的に考える必要があるのです。
■ムリな要求をすれば欠陥商品が生まれる
原価で100円かかるものを、「50円でやれ」といったら、商品の質が悪くなるのは、当たり前です。
その仕事を受けた会社は、安く済ませるため、いろいろな手抜きを行います。ビルをつくるときに、川砂を使わなければいけないのを海砂にしてしまう。コンクリートは石灰石でカルシウムだから、海砂にすると塩が入ると溶けてきます。鉄板の厚みが3ミリでなければいけないのが、1ミリになる――。
原価を切った値段にすれば、そういう欠陥商品が生まれます。なんでも値切って安くすることはいいことではありません。安い値段の商品は、安いなりのものになるから、付加価値は出ません。商品の本質的なレベルを下げることは、会社の経営を危うくすることになります。
「この請求、今月厳しいから、来月にしてくれない」
と、支払いサイトを長くしても、いつかは払わなければならないから、経費削減にはなりません。むしろ、早く払って1%を負けてもらったり、ムリを聞いてもらったほうが良いのです。
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