‥‥‥★54 節約と経費削減の違い、理解していますか?
■家庭と会社の最大の違い
「電気はこまめに消しましょう」。ときどき、出向いた会社のトイレでこのような張り紙を目にすることがあります。家庭では、お子さんがトイレを使用した後、ちゃんと電気を消しているか、チェックするお母さんもいるようです。手間を惜しまない、すばらしい節約です。
しかし、この節約を会社に持ち込み、トイレの電気を消しているか、社員にチェックさせた場合、はたして、会社の経費削減になるでしょうか。
家庭と会社の最大の違いは人件費です。家庭における人件費は0円です。まったくかかりません。まめにトイレチェックする給料20万円のお父さんも、何もしない給料50万円のお父さんも、人件費は同じタダです。そのため、家庭では、まめに動けば動くほど、電気料金が下がり、家計簿は黒字になります。これが節約です。
しかし、会社では、常に人件費がかかります。従業員が動けば動くほど、人件費がかさみ、コスト高になります。社員を1時間に1回、トイレチェックに行かせると、往復で2分として、2分間の人件費がかかることになります。
もちろん、「電気料金>2分間の人件費」なら、経費削減です。しかし「電気料金<2分間の人件費」なら、経費のムダづかいいになります。さて、ここでポイントになるのが、2分間の人件費です。あなたは、社員の2分間当たりの人件費を知っていますか?
■分給の計算式
社員の給料は1カ月いくらですから、時給換算、ましてや1分間の給料にまで、気を配っている経営者は少ないと思います。この機会に、分給の計算を行ってみましょう。計算式は以下の通りです。
計算式の1.5倍とは、賞与分、福利厚生費や社会保険料など負担から導いた割合。実稼動は祝日や夏期・冬期休暇を考慮して、20日で固定します。
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給料×1.5倍÷実稼動20日÷8時間÷60分=分給
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20万円:31.25円 │ 50万円:78.13円 │ 75万円:117.19円
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25万円:39.06円 │ 55万円:85.94円 │ 80万円:125.00円
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30万円:46.88円 │ 60万円:93.75円 │ 85万円:132.81円
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35万円:54.69円 │ 64万円:100.00円 │ 90万円:140.63円
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40万円:62.50円 │ 65万円:101.56円 │ 95万円:148.44円
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45万円:70.31円 │ 70万円:109.38円 │ 100万円:156.25円
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◆分給100円なのは、給与64万円の社員と覚えておきましょう
トイレチェックの人件費は、給料20万円の社員が担当した場合、31.25円×2分=62.5円。そして、電気料金は、57ワットの白熱電球1個、1時間当たり約1.2円となっていますから、人件費61.3円の赤字。51個の電球を消して±0、52個を消してやっと1.2円の経費削減となります。
いかに人件費が高いか、分かったと思います。家庭で給料50万円のお父さんが、家中の電気を消して歩けば、1円、2円と節約になりますが、会社では、給料50万円のお父さんが1円の節約を行うために、1分78.13円の人件費がかかってしまうのです。
家庭の節約法則を会社に持ち込んではいけない所以はここにあります。会社で経費節減を行う場合、常に行動する人件費を計算しなくてはなりません。
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